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読書 380 シンデレラ・ティース 著者 坂木 司
2021年01月24日 1:40 PM
「大学二年の夏、サキは母親の計略に引っかかり、大っ嫌いな歯医者で受付のアルバイトをすることになってしまう。個性豊かで、患者に対し優しく接するクリニックのスタッフに次第にとけ込んでいくサキだったが、クリニックに持ち込まれるのは、虫歯だけではなく、患者さんの心に隠された大事な秘密もあって・・・。サキの忘れられない夏が始まった!」
歯科の雑誌で紹介されていたので、興味があり読んでみました。
シンデレラ・ティース、ファントムvsファントム、オランダ人のお買い物、遊園地のお姫様、フレッチャーさんからの伝言の5編。
ミステリーということになっていますが、通常あらわれる殺人などはない中で、謎ときが展開されます。
推理していくのは歯科技工士。
その他にも、歯科衛生士、受付、歯科医師が登場し、患者さんの心の中に秘めた悩みを解決していきます。
患者さん目線のストーリー展開で、かつ、専門的な描写も的確に行われており、この小説を書くためのリサーチ力には感心させられてしまいます。
歯科を舞台に書かれた数少ない小説の中のひとつ。
あらためて、患者さんと接する時に私たちが心掛けておかなければいけない事を再認識させられました。
襟を正して仕事に取り組もう。
恋愛あり、笑いあり、感動あり。
歯科にはこだわらず、純粋にミステリーとしても、とても楽しめる本でした(院長)。
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読書 379 太陽のかけら 著者 大石 明弘
2021年01月20日 2:24 PM
「大学に行って仕事に就くってことがフツーの人生なんじゃないんだよ。そんなの甘い!と思う。一直線に川の流れを下っていくよりも、くねくねと、あっちこっちに曲がりながら進んでいく方が面白い。失敗するかもしれない。挫折するかもしれない。だけど、私は、そういう生き方のほうがいい。」
女性で唯一のピオレドール(金のピッケル賞)クライマー、谷口けいの物語です。
全然知らなかったのですが、新聞の書籍紹介欄にあり、読んでみました。
小中学校時代には、あまり目立たない存在だったが、高校時代にアメリカへ1年間留学し、帰国してから、突然、家を出て自活。
働きながら勉強し大学へ入学。
もちろん、仕送りなし。
大学時代は、サイクリングクラブで活動。
卒業し就職するが、アドベンチャーレースや登山に明け暮れ、3年で会社をやめる。
それからは、エベレストを含め、世界で様々なルートを開拓しながら世界の山々に挑む。
この計り知れないエネルギーは、どこから来たのだろう。
40歳を過ぎたら、これからの人たちを育てることも考ることを考えていた矢先、北海道大雪山系黒岳で滑落。
43歳の人生を終える。
帯タイトルに書かれていた、本文の抜粋のことばは、通常耳にするとあまり響かないが、彼女が言うと非常に説得力があり考えさせられてしまう。
なぜか。
それは、言葉にしていること、あるいは、それを大きく超えたレベルで自分自身行動し、体現していたから。
自由になるための責任と覚悟がひしひしと伝わってきました。
関わった人すべてから愛される存在。
厳しさの中に秘めた優しさ、包容力。
写真に写っている笑顔が勇気づけてくれます。
この本に出合えてよかった。
著者も同じ山ヤで、作家じゃないのに、仕事をしながら一つの素晴らしい本として書き上げています。
みんな、けいちゃんが導いてくれているんでしょう。
感動的な本でした(院長)。
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読書 378 健康のすべては「歯」と「口」から始まる 著者 江口 康久万
2021年01月06日 4:23 PM
身体の健康は、「歯」を含めた「口」から始まるといっても過言ではありません。人類がかつて経験したことのない「人生100年時代」に突入した現在、いつまでも健康でいるために「口の働き」の重要さを再確認し、ぜひ新型コロナウイルスやインフルエンザの症状の重篤化を防ぐためにも、口腔ケアを大切にしてほしいと願っています。
と、帯タイトルに書かれていました。
「ピンピンコロリ」という言葉は、一度は耳にしたことがあると思います。
健康寿命をのばす生き方。
そのためにはどうすればよいかを学校歯科医が書いた本です。
歯科医師会が提唱する、80歳までに20本の歯を残そうという「8020運動」と同様、結果を求めるためには、そのプロセスが大事であることが語られています。
「三つ子の魂百までも」というように、小さい頃から身に着けた生活習慣は、いい意味でも悪い意味でも、成人期以降に反映されます。
幼少期からの地道な取り組みが、年齢を重ねるにつれ、大きな力となってくる。
学校歯科保健という場で、何をやるべきかを常に考え取り組まれていた先生のお話は、なかなか説得力があります。
考え方、実現させるための方法論など、私たちにとっても非常に参考になることが書かれていました。
常々、昔のウイスキーのコマーシャルにあった「何も足さない、何も引かない」という言葉が歯科の世界で実現されたらすばらしいと思っていました。
私たち歯科医が行う事は、導く事、見つめる事。
そんな事を思い起こしています。
著者の紹介で、年齢もほぼ同じであることを知りました。
新型コロナウイルスを含めた感染症も口腔ケアの重要性が叫ばれています。
一度、原点に立ち返って健康について考えてみるための良著でした(院長)。
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読書 377 新釈 遠野物語 著者 井上 ひさし
2020年12月25日 9:32 AM
東京の或る交響楽団の主席トランペット奏者だったという犬伏太吉老人は、現在、岩手県は遠野山中の岩屋に住まっており、入学したばかりの大学を休学して、遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている“ぼく”に、腹の皮がよじれるほど奇天烈な話を語ってきかせた・・・。“遠野”に限りない愛着を寄せる鬼才が、柳田国男の名著『遠野物語』の世界に挑戦する、現代の怪異譚9話。
仙台在住の頃、遠野へ旅行したことがありました。
盛岡経由で訪れ、酸ヶ湯温泉にも泊まり、とても思い出に残る旅でした。
遠野では、河童ぶちに行ったり、民話を聞かせてもらったり、時間の流れがゆったりするような、あるいは、過去へフィードバックするような、今考えると不思議な感覚でした。
思い込みによるものなのか、小説に出てくるように、狐に騙されていたのか、定かではありません。
東北地方(山形)出身の作者ならではの感性で、物語は語られています。
過去に、ひとが自然の一部として生活していた頃の、もしかすると実話なのでは?という思いが湧き上がっています。
語り継がれた民話を著者の感性で表現された、新たな遠野物語。
最終章では、大どんでん返しあり。
舞台を見ているような小説でした(院長)。
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読書 376 青葉繁れる 著者 井上 ひさし
2020年12月22日 1:13 PM
「あげな女子と話ができたらなんぼええべねす」・・・東北一の名門校の落ちこぼれである稔。ユッヘ、デコ、ジャナリの四人組と、東京からの転校生、俊介がまき起こす珍事件の数々。戦後まもない頃、恋に悩み、権力に抗い、伸びやかに芽吹く高校生たちの青春を生き生きと描く。ユーモアと反骨精神に満ちた青春文学の傑作。
高校の頃に、NHKのドラマで放映されていたのを思い出し読んでみました。
大学が仙台だった事と、母が二女高出身だったことなどもあり、リアルに楽しみました。
いわゆる仙台弁が飛び交い、もう、それだけでも笑いっぱなし。
宮城県在住の叔母を思い出し、郷愁の念にかられました。
今のように巨大になる前の仙台。
地方都市として程よいサイズの街だったような気がします。
自分も高校は男子校だったため四人組の気持ちは痛いほどよくわかり、思ったことを即、行動におこしている姿がとても気持ちよく、羨ましさを感じています。
学生を育てる環境があったんですね。
今では考えられません。
最後はちょっと、しんみりしましたが、極上のエンタテイメントを楽しみました(院長)。
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絵描き歌
2020年12月19日 4:28 PM
以前子供向けに、歯の紙芝居を作ったのですが、その時に「歯の神様」のキャラクターが生まれました。
編みぐるみを作ったりしていましたが、今回、「歯の神様絵描き歌」が完成しました。
パソコンで音源を作り歌を録音し、絵描き歌の手順の解説もまとめたのですが、知り合いのお子さんに渡したところ、早速、作品が届きました。
なかなか凛々しい神様です。
歌も覚えてくれているようです。
とっても嬉しいクリスマスプレゼントを頂きました。
しょうたくん、ありがとう。
大切にするね(院長)。
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読書 375 春になったら苺を摘みに 著者 梨木 香歩
2020年12月15日 3:52 PM
「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェストと、さまざまな人種や考え方の住人が暮らしていた。ウェスト夫人の強靭な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分の問いつづける。
物語の生まれる場所から送る、著者初めてのエッセイ。
エッセイということですが、ほとんどファンタジーでした。
同じことについても、受け止め方によって全く別の世界になるということがわかりました。
日本語への愛など、穏やかに、しっかりと伝わってきます。
日常の捉え方が私たちとは全然ちがうんですね、
イギリスへ留学していた時に出会った人たちとの交流が舞台になっていますが、人物像、風景が目の前に浮かんできます。
分化、人種の違いによる見えない壁も、受け止めつつ接点を見出していく。
相手を鏡にして自分自身を見つめる。
この本を読みながら、自分という存在も宇宙の一部であるんだなという思いに至りました。
心優しい文体。
包み込まれる世界。
素敵です(院長)。
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ポインセチア
2020年12月12日 7:18 AM
今年も届きました。
毎年12月になると、患者さんが届けてくれます。
色鮮やかなポインセチア。
例年だと、ハロウインが終わると一気にクリスマスのムードに突入していましたが、今年はコロナの影響で、今一つ盛り上がりに欠けているようです。
そんな中、いつもどおりの心遣いが届くと、心が温まるのを感じます。
今年は静かに、クリスマスを味わいたいと思います(院長)。
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読者 374 父と暮らせば 著者 井上 ひさし
2020年12月11日 3:07 PM
「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」愛する者たちを原爆で失った美津江は、一人だけ生き残った負い目から、恋のときめきからも身を引こうとする。そんな娘を思いやるあまり「恋の応援団長」をかってでて励ます父・竹蔵は、実はもはやこの世の人ではない。「わしの分まで生きてちょんだいよォー」父の願いが、ついに底なしの絶望から娘をよみがえらせる、魂の再生の物語。
舞台は昭和23年の広島。
原爆投下後の親子の物語。
劇場公演のために書かれ、実際に、日本だけではなく、フランスなどの海外でも上演されたようです。
被ばくし、将来、周囲の事を考え、結婚しないと決めた自分と意中の人を慕う自分との心のせめぎ合い。
応援する父。
美しくも切ない恋の物語。
翻訳により、広島の方言で書かれたセリフの面白さが消えてしまったにも関わらず、海外でも、かなりの好評を得たようです。
とても考えさせられるお話でした。
著者はナガサキについても書く予定だったようですが、思いは叶いませんでした。
亡くなったのが2010年。
2011年の震災時に存命だったら、どのような言葉を発してくれたのでしょう。
聞けないのが残念です
表紙は和田 誠さんのデザインでした(院長)。
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読書 373 馬喰八十八伝 著者 井上 ひさし
2020年12月05日 11:24 AM
「年老いた母を種付け馬・花雲の背中に乗せ、嘘を封じる百ヵ所まいりに出た若者。馬の名産地・桜七牧で、真実を述べたばかりに八十八回叩かれた腹いせに、同じ数の嘘をつき生きることを決意、自ら八十八と名乗る。悪代官に野盗の頭目、一癖も二癖もある相手に、嘘つきの天才八十八が言葉巧みに勝負を仕掛ける。恋あり、オゲレツあり、爆笑必至、痛快な男の出世物語。」
学生の頃に単行本を買っていたのですが、読まずにそのままになっていました。
今回、文庫本になったものを見つけ、再度トライ。
これが、読み始めたら止まらない!。
嘘を武器に江戸時代の権力と闘う。
危機が押し寄せても、巧みな嘘で乗り切る。
最初は自分のためだけにやっていたことが、回を重ねるごとに周りの人間関係の中での行動に変化する。
成長していく姿に引き付けられます。
痛快という言葉は、この小説のためにあると言っても過言ではないでしょう。
馬の言葉がわかる八十八が、馬とコミュニケーションをとりながら旅をする。
男と女の間の駆け引きも、おおらかな江戸時代を背景に、美しくも面白く描かれています。
まさに、嘘も方便。
使い方によって、こんなにも威力を発揮するんですね。
結末は、以前読んだ、東北地方の先住民、蝦夷のアテルイを主人公とした「まほろばの疾風」をちょっと彷彿させ、心に熱いものを感じました(院長)。
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