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読書 358 見えないものとの対話 著者 平川 克美
2020年08月05日 8:07 AM
「平川君はここでも僕が前に聴いたのと同じ話をいくつも繰り返している。でも、僕はつい聴き入ってしまう。語るたびに彼の物語は渋味を増し、未聞の深みに達するからである。」
帯タイトルの言葉です。
サブタイトルは「喪われた時間を呼び戻すための18章」。
詩、短歌、小説の言葉に触発されて綴られた文章の数々。
最初の章は、東京オリンピックのマラソンで銅メダルを獲得し、後に自殺した円谷選手の遺書について語られています。
川端康成は「千万言も尽くせぬ哀切」と表現し、三島由紀夫は「傷つきやすい、雄々しい、美しい自尊心による自殺」と言った文書。
円谷選手の本を以前、読んだ事があります。
東京オリンピックという舞台でメダルをとったにも関わらず、次に求められていることへの重圧を背負って過ごした日々。
気持ちが純粋であったがために、周りに翻弄されつつも、ひたむきに突き進んだ選手人生。
第1章で取り上げられていることにより、最初から引き込まれてしまいました。
読み進めると、徐々に、気持ちの透明度が上がっていくような感じがありました。
人間の原点が静かに表現されているような文章です。
見えているものには実態があるのか。
物事は目ではなく、脳で見ているという言葉が妙に抵抗なく入ってきます。
偶然と思われていることが、実は必然なのではないかという視点には共感を覚えます。
時の流れを変えてくれる本でした(院長)。
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