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読書 363 ヤクザときどきピアノ 著者 鈴木 智彦

2020年10月05日 5:08 PM

やくざ コピー「曲が進むと身体全体が鍵盤の右端、高音部分に寄っていき、まるでキリで突くように鋭く鍵盤を叩いた。強い連打に移行した刹那、衝撃波が俺の頭を横殴りにし、火薬がはじけ、突き飛ばされるような感覚があった。三十年前、ロサンゼルスで経験した光景がまざまざと蘇った。」

 

アバのダンシングクイーンが弾きたくて、譜面の読み方も知らない52歳がピアノ教室に!

「サカナとヤクザ」「ヤクザと原発」など、潜入ルポで知られるライターがピアノに挑戦します。

自分がボイストレーニングにトライした時のメンタリティーや状況が脳裏をよぎり、とても他人事とは思えませんでした。

とにかく、1曲が弾けるようになりたい。

52年という人生経験の中で培った情熱を思いっきりピアノにぶつける姿は、どこか、神々しさを感じさせます。

「練習をすれば上手くなる。練習をしなければ一切上達しない。やればできる。やらねばできない。そして、練習をしない言い訳にはなんの意味もない。」

響く言葉です。

気持ちがわかりすぎて、一緒にレッスンを受けているような気になってしまいました。

そのまんまなんです。

譜面が読めず、クラシック音楽なんて意識して聴いた事はほとんどなく、ただ、自分で作った歌を上手く歌いたい、それだけの思いでボイストレーニング教室に突入した自分と思いっきり重なります。

先生が藝大声楽科出身ということもあり、いつの間にかオペラのアリアをレッスンで歌っている自分。

あれよあれよという間に、教室の発表会のステージに立っていた自分。

クラシックの世界に浸り始めた自分。

そして、勘違いしてその気になっている自分。

あ~、なんでこんなに目出たいんでしょう。

自分を知らない強み、年を重ねた強み、人目が気にならない強みは最強です。

本の最後の部分では、ちょっとほろりとくる場面も。

しみじみと味わいました(院長)。

 

   

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