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読書 229 残像に口紅を 著者 筒井 康隆

2017年07月31日 5:40 PM

IMG024181995年に文庫本で出た作品。

『「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことはとても哀しい・・・。言語が消滅するなかで、執筆し、講演し、交情する小説を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的小説。』

 

言葉が消えてゆく状況というのは想像が出来ますか?

最初に「あ」から消えるのですが、それだけで「愛」、「あなた」、「明日」、「暑い」、「味わい」、「赤」・・・など、沢山の言葉が消えてしまいます。

「ぱ」、「せ」・・・と順になくなっていきますが、代わりの言葉で表現出来ているうちはいいのですが、それが出来なくなった時には存在が消滅してしまう。

「以前にはあったような・・・」という記憶の痕跡を辿っても、蘇らない。

言葉というコミュニケーションツールを失い、自分自身の思考回路も、ままならなくなってくる。

自分自身の存在自体も曖昧になってくる。

人間から言葉を奪うとこうなるんですね。

 

言葉が消滅しても、違和感無くストーリーが展開されて行きます。

最後まで小説としての形を保ち続けるところは流石です。

筒井康隆氏以外には無理でしょう。

発想自体が違います。

唯一無二の作品。

別世界を漂ったような読後感があります。(院長)

 

   

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